フェニルケトン尿症(PKU)とは?

血中フェニルアラニン(Phe)濃度が高い状態が続くと、脳に悪影響を及ぼします。

フェニルケトン尿症(PKU)とは?

フェニルケトン尿症(PKU)は、先天性代謝異常症の1つです。

「フェニルケトン尿症(Phenylketonuria, PKU)」は、フェニルアラニン(Phe)というアミノ酸の代謝が先天的にうまく働かず、フェニルアラニン(Phe)が体内に蓄積し、さまざまな症状が現れる病気です。
遺伝子の異常がもたらすまれな病気で、国により小児慢性特定疾病と指定難病に定められています。

フェニルアラニン(Phe)は、すべての天然タンパク質に含まれる必須アミノ酸

わたしたちの体をつくるタンパク質は、20種類のアミノ酸から合成されています。
そのうち体内でつくり出すことができない9種類のアミノ酸のことを「必須アミノ酸」といいます。

  • 必須アミノ酸(体内でつくることができないアミノ酸)
    イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジン
  • 非必須アミノ酸(体内でつくることができるアミノ酸)
    チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニン

この体内でつくり出すことができない必須アミノ酸の1つが、「フェニルアラニン(Phe)」です。 フェニルアラニン(Phe)は、牛乳、卵、肉などのすべての天然たんぱく質や、人工甘味料の一部に含まれています。

フェニルアラニン(Phe)は、牛乳、卵、肉などのすべての天然たんぱく質や、人工甘味料の一部に含まれています。

フェニルケトン尿症(PKU)の原因

体内において、フェニルアラニン(Phe)は「フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)」によって代謝・分解されます。
フェニルケトン尿症(PKU)では、遺伝子の変異によりフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)の働きが落ちて、フェニルアラニン(Phe)が代謝・分解されにくくなっています。
そのため、フェニルケトン尿症は、「フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)欠損症」と呼ばれることもあります。

  • 正常なフェニルアラニン(Phe)の代謝・分解

    正常なフェニルアラニン(Phe)の代謝・分解

  • フェニルケトン尿症(PKU)

    フェニルケトン尿症(PKU)

BH4欠損症

フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)は、テトラヒドロビオプテリン(BH4)という補酵素によって活性化されます。
テトラヒドロビオプテリン(BH4)の働きが落ちて、フェニルケトン尿症と似た症状を示す疾患もあり、「BH4欠損症」と呼ばれます。

フェニルケトン尿症(PKU)の発症率

日本では、新生児が受けるマススクリーニング検査の中でフェニルケトン尿症(PKU)についても調べています。
日本では約7万人に1人の病気で、全国で年間20人前後が発見されています。

フェニルケトン尿症(PKU)の発症率

フェニルケトン尿症(PKU)に典型的な症状

⾎中フェニルアラニン(Phe)濃度が高い状態が続くと、脳に悪影響を及ぼします。

幼少期に無治療の場合の症状*

新生児マススクリーニングで発見されず、または無治療の場合、生後数ヶ月から2歳頃までに脳の発達障害をきたします。
小頭症、てんかん、重度の精神発達遅滞、行動上の問題などを示し、特有の尿臭(ネズミ尿臭、カビ臭)、赤毛、色白、湿疹がみられることがあります。

  • 小頭症
  • てんかん
  • 重度の精神発達遅滞
  • 行動上の問題
  • 特有の尿臭
  • 赤毛
  • 色白
  • 湿疹

*新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019 http://www.jsimd.net/pdf/newborn-mass-screening-disease-practice-guideline2019.pdf

十分に治療できていない成人患者さんの場合の症状

十分に治療できていない成人患者さんでは、以下のような精神症状を起こすことがあります。
患者さんの⽣活に影響を及ぼす可能性があるため、⽣涯にわたって治療を⾏い、⾎中フェニルアラニン(Phe)濃度をコントロールすることが重要です。

  • うつ
  • 不安
  • 集中困難
  • もの忘れ

血中フェニルアラニン(Phe)濃度が高い場合の症状

⾎中フェニルアラニン(Phe)濃度が高い、またはコントロールできない場合、脳に持続的な影響を与える可能性があります。
血中フェニルアラニン(Phe)濃度が高い、あるいは不安定な場合の症状には、以下のようなものがあります。

  • 霧がかかったような感じ
    情報処理が遅くなった感じ
  • ⼈間関係に問題が⽣じやすい
  • 記憶障害
  • 不注意
  • 意思決定、問題解決の難しさ
  • うつ
  • 不安
  • イライラする

血中フェニルアラニン(Phe)濃度が高い、あるいは不安定な場合、次のような問題につながる可能性があります。

  • 学校や仕事で集中が続かない
  • 仕事を覚えたり、完了したりするのが難しくなる
  • 友⼈や周囲との関係が悪くなる
血中フェニルアラニン(Phe)濃度が高い、あるいは不安定な場合、次のような問題につながる可能性があります。

患者さんの声

  • ⾎中フェニルアラニン(Phe)濃度が⾼い時は、髪の⾊が⾚くなります。
    学校の先⽣に質問されたことがあります。
  • 血中フェニルアラニン(Phe)濃度が高い時は、頭が回らない気がします。食事療法をきちんと行っている時は、仕事や作業に集中して効率よくできると感じています。

※患者さんの声は体験に基づく一例であり、疾患の状態、症状、食事療法は患者さんによって異なります。⾎中フェニルアラニン(Phe)濃度のコントロールや食事療法は医師の指導に従ってください。